僕が整備士になったばかりの頃に言われた、業界の大ベテランからのお言葉です。
「腕の良い整備士は工具を常に整理整頓して何が何処にあるか把握しているから、作業も素早く行える。使用後はウエスで丁寧に手入れをするからいつでも万全の状態。これが、腕の悪い整備士だと道具を大切にしないからどこにでも道具を放り込むから、作業の前に道具を探すという無駄な時間が掛かってしまう。更に見つからない場合は勝手に他人の工具を持ち出すから始末が悪い。整理整頓されたキャディの持ち主なら、仕事をさせなくても腕前は判る。」
度々同じような話に触れていますが、工具を集め出してからこの言葉の深さをしみじみと実感しております。
正直、僕は先の言葉でいうところの後者でした。元々工場にあった古い工具群から使えそうなものを選んでレンチ類・ドライバー類・プライヤー類に分けそれぞれお菓子の空き缶に放り込んでいただけでした。
自分で揃えた真新しい工具なら、大切に扱おうと思います。ましてや高価な一流と言われる工具なら尚更!腕のない僕は逆説的に「工具を大事にすることで、少しは腕が上がってくるんじゃないか」と考えました。そして現在、技術はともかく丁寧な作業を行うようになったと実感しています。
現役・元整備士の方に所有工具のメーカーを尋ねると圧倒的に多いのがSnapOn。次がネプロスでしょうか。もちろん、所謂高級ブランドを使っていなければ一流整備士ではない、なんてのは早計。事実、元工場長は素晴らしい腕を持っていましたが、使用工具はほとんど国産の通常ランク製品でした。膨大な点数に及ぶそれら工具が常に手入れされ整然と収納されたキャディは、某自動車メーカーの方が多数来店・視察された際に非常に感心され、写真に撮って行かれたほどです。色々な経験をしているからこそ、様々な工具を揃えます。工具の豊富さとそれらを素早く取り出せる状態。整備士にとっての脚下照顧はやっぱりキャディです!
先生如何でしょう?