先日、お昼過ぎに年配の方が来店なさいました。
「こないだ社長さんに話ししておいたが、S社の商品を見せてもらいたい」
「ありがとうございます。それでしたら私が承ります」
ということで試乗していただき、お気に召していただいたので担当営業に
連絡をとると夕方になるとの事。
「担当の者が参るのが夕方になりますので、お時間よろしければその頃
お伺いさせていただいて宜しいでしょうか?」
「それなら明日の朝に来てくれる?」
同夕、担当がやってきたので早速見積を作成。ディーラーが予め発注を
かけておいた商品に限り特別値引枠を設けていると言うことで、お客様から
唯一ご希望のあったシルバーで、一番価格の安いグレードを試算しました。
ただ、試乗車の内装色がアイボリーであったのに対し、限定車はブラック。
翌日、営業とともに訪問。先の旨をカタログで説明。
「台数限定でお安くできる車があるのですが、シルバーだと室内の色が
黒のものしかありません。当店で見ていただいたような白(アイボリー)だと
通常値引きしかできません。そこさえお構いなければお安く買っていただけ
ますが、よろしいでしょうか?」
「別に構わん」
「ウチにある展示車で(内装が)黒なのがありますが、実物で確認していただけ
ますか?」
「いや、見なくてもいい。黒でいいですよ」
ということで、サインしていただきました。
それから二日後。そのお客様から電話で呼び出されました。
「こないだあんたが持ってきた紙見よったら中が黒と書いとるやん。あんた
あのときワシが”中は白がいい”と言ったら”ハイハイそうします”言うたやろ」
と契約書を見せられました。
そこには担当営業がプリントアウトした「内装色:ブラック」のブラックを線で
消して上に「アイボリー」と鉛筆書きしたお客様の文字。
こっちはワケが判りません。もしかして年齢もあって新車購入をご家族に
反対されての断り文句かとも思いましたが、
「申し訳ありません、確かに私は内装は黒しかないと説明させていただいた
つもりですが、誤解を招いてしまったのかもしれません」
とその場は引き下がりました。
慌てたのは営業。せっかくの成績がドタキャンされてはかなわんとばかり
すぐに飛んできて、もう一回商談させてくれと懇願。その為には限定車でなく
通常値引きしかできないものしかありません。社長に決済をいただき、ウチも
損を覚悟の上で、先に決めた価格のまま提示することにしました。
「先ほどは申し訳ありませんでした。お客様のご希望に添う、外はシルバーで
内装は白のものでもう一度お話させていただけませんか」
「わかった。で、それだといくら上がるの?」
「いえ、先日決めていただいた金額で結構です。ウチもいい加減なことは
しません。ご迷惑をお掛けしましたし・・・ただし、これで決めていただいた上は
すぐメーカーに発注かけますので、後で色が違うなどと言われても変更は
不可能です。」
「それでいいです。言いません。」
「それではもう一度確認します、一番お求め安いグレードで、外はシルバー、
内装は白・アイボリーでよろしいですね?」
「そうです。なるべく早くもってきて」
胸をなでおろす営業。
それから二日後の朝、お客様からの電話。
「あー、あんたか。こないだ決めた車イヤになったからやめるわ」
「エ・・・?それは困ります!先日も申し上げましたが、もうメーカーに発注を
かけているんですよ!」
「別にアンタの所から直接メーカーに注文しているわけじゃないやろ。
こないだのことでアンタのところは信用できんし、もうイヤになったわ」
辛うじてメーカーにストップはかけられたものの、我々は何をしにいったんでしょう。
何度念を押しても「そんなこと言わなかった」と確信を持って否定。とても正常な
頭の状態だとはとても考えられませんし、そう思えばこちらの気も収まります。
結構多いんですよね、自分の思い込んでいることのみが紛れもない事実で、
誰が何と言おうとも正しいと信じきっている。こういう人に取り付く島があるはずも
ありません。だいたい印刷物ですら自分で訂正しちゃうんですから。
子供に「そんな車売りつけられて」と突っ込まれ被害者妄想ができたんでしょうか?
ちなみに「社長に話した」おっしゃっていますが、社長に確認すると「話すどころか、
面識がない」と申しておりました。こりゃホンモノだ。
先生如何でしょう?